「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。議論に勝って、他人や社会をコントロールしようとする人。他人を言い負かして、悦に入る人。何れにしても、敗者になるのは御免です。
シリーズ『議論に負けない方法』では、そんな彼らの卑怯な手口を検証します。今回のテーマは、「卑怯な手口3、虎の威を借る」です。
議論に勝つ卑怯な手口
議論の本来の意味は、情報と視点の共有です。物事を判断するには、情報が不可欠です。重要な情報に欠ければ、判断を誤ります。また同じ情報であっても、見方によって姿や意味が変わります。
情報と視点の盲点を補い合い、より完全な姿に近づけていく。それこそが、議論に求められる本来の役割です。
但し、議論は悪用もされます。利害関係にある者が、利益誘導のために。特定の思想を持った活動家が、社会を動かすために。マウンティングし、優越感を満たすために。
議論で言い負かされない、マウンティングを許さないためには、彼らの用いる卑怯な手口を、知っておかなければなりません。
卑怯な手口3、虎の威を借る
登場するだけで人々をたじろがせ、反論を封じる、思考停止に至らしめる権威が、この場合での虎です。
虎は人物の他、組織や団体、概念、思想、学術などを含みます。何れにしても、そこには権威があり、持ち出すだけでマウントを取れます。
人権と差別
このテーマで最初に思い浮かぶのは、人権と差別です。人権は、尊重しなければならない。差別は、絶対にあってはならない。これに同意せず、意を唱える者は、殆ど見当たりません。よほど特殊な考え方を持っているか、安易な逆張りをしているなら別ですが、あくまでも少数のノイズのような存在です。
人権の侵害である、差別である、と位置付けて同意を得たなら、もはや誰も逆らえません。それを良いことに、身勝手、利益誘導などを正当化する輩が多くいます。
例えば、LGBT問題において、「内心を持って性別は決定される。その決定は、最大限に尊重されなければならない」とする立場があります。
つまり生物学的に男性であっても、「自分は女性である」と思ってそうアピールしたなら、社会は彼を女性として扱うべきだ。という話です。
大枠で賛同し得る話ではありますが、そこに女風呂、女子トイレ、女子更衣室などが含まれるとなれば、戸惑う人も多いのではないでしょうか。仮に自称トランスジェンダーが、真実にそうであると100%の保証があるなら、まだ検討の余地はあります。
しかし、あくまでも自称なので、実際にどうかは解りません。ですからこれを認めてしまうと、普通の男性がスケベ心で自由に女風呂に入って来る。盗撮や覗きなどを目的に、性犯罪者が女子トイレに堂々と入れるようになる。といった事態を招くのは、自明です。
ですから全体としてバランスを考えたなら、性転換もなく自認のみで、女性だけのエリアをフリーパスにしてはいけない。無制限に、権利は拡大できない。そこに一定の制限を設けるのは、仕方がない、合理的である。という結論になります。
しかし偏った活動家は、その制限を、人権侵害である、差別である、と批判します。
報道の自由度ランキング
2020年、国境なき記者団による報道の自由度ランキングにおいて、日本は66位にあります。2010年の11位から急落し、2016,7年では72位にまで落ち込みました。 これを受けて日本のメディアは、「日本には報道の自由がない」と揃って訴え続けています。
しかし一方、フリーダムハウスによる同様の調査では、日本は民主主義国として一般的な自由があると評価されており、アメリカやフランスと同程度です。
このギャップは、ポイントの付け方に拠るものです。国境なき記者団の調査は、主観的な心象が強く反映されます。一方のフリーダムハウスのそれは、客観的に共通の基準で行われます。
ですから国境なき記者団のランキングには、日本に限らず、何でこの国がこの順位なの? という違和感も目立ちます。一方のフリーダムハウスには、そのような疑問の声は上がっていません。
フリーダムハウスのそれが絶対正義ではありませんが、そうと知りながら、国境なき記者団の悪い結果のみを報道し続けるのは、アンフェアでしょう。
メディアからすれば、現政権を叩く意味でも、制約をより小さくする意味でも、報道の自由度は低い方が望ましいと言えます。その都合で、国境なき記者団のそれだけが都合よくピックアップされ、国際社会の評価を受け入れろ! と圧力をかけています。
モンドセレクション
日本で普通に暮らしていたら、『モンドセレクション、金賞受賞!』という宣伝文句を、何度も目にしているはずです。モンドセレクションをよく知らない人は、何だか大層に権威のありそうな名前で、これ程に大々的に謳うのだから、きっと凄い賞なんだろうと解釈します。
モンドセレクションは、ベルギーの民間企業によって主催されています。多くのジャンルの製品を審査、採点によって金賞、銀賞、銅賞のラベルが授与され、その結果をマーケティングに利用できるという訳です。
ただモンドセレクションの権威については、大いに疑問です。応募費用は15万円程度と安く、全応募のうち約半数が日本という実態です。金賞、銀賞と言っても、コンクール形式ではありません。応募した製品のうち90%が何れかを受賞し、その半数以上が最高金賞、金賞、というのですから、その価値には疑問符がつきます。
これではマーケティング用に、賞をお金で買っている。日本人の欧米コンプレックスをついた、詐欺手法だ。という批判が出るのも、頷けます。
さすがに詐欺は言い過ぎだと思いますが、『モンドセレクション、金賞受賞!』については、「きっと凄い賞なんだろう」から、評価を改めた方が良さそうです。僕は個人的には、「普通に、良質の製品だと認められたんだな」と思っています。
これは普通に虎の威を借るのではなく、猫を虎に見せかける行程を踏んでの、大掛かりな『虎の威を借る』です。
『虎の威を借る』に対する、打開策
どんな権威を前にしても、思考停止しない
この戦法が通用してしまうのは、権威を前に屈服して、思考停止するからです。誰を持ち出そうと、何を持ち出そうと、それだけで優位に立たせてはいけません。
ズレた基準で、やたらと「差別!」、「人権侵害!」と叫ぶ人は、平等な社会、人権が尊重される社会を考えていません。そう言えば相手が黙って、自分の意見や思想を通せるのを知っているからです。
国境なき記者団やモンドセレクションなどのように、何だかよく解らない凄そうなものを提示されたなら、その内実に注意を向けてください。それらを利用する人は、当然、高い権威性を演出して提示してきます。その演出を、鵜呑みにしてはいけません。
この手法の使い手は、見上げてくれない、思考停止してくれないのを、何よりも嫌がります。またその多くは、虎さえはがしてしまえば、中身はスカスカです。
まとめ
権威あるものを利用して、『虎の威を借る』手法は、卑怯者の常套手段です。彼らは虎を登場させ、屈服、思考停止してくれるのを期待します。
誰を持ち出そうと、何を持ち出そうと、それらは恣意的にピックアップされた断片でしかありません。持ち出された大先生が、同じ意見であるとは限りません。憲法違反だ! と声高に叫んでも、そこは合憲か違憲かを争う裁判所ではありません。
どんな権威を提示されても、決して屈しないでください。
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