「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。社会が豊かになり、強くなくても生きられる時代になりました。強さを求めてきた歪を埋めようと、日本社会は数十年をかけて変化し続けています。
しかし「強さの肯定」、「強さの推奨」までも捨ててしまえば、また逆側で過ちを犯します。
弱さを承認する社会の恐ろしさ
現代人の心は弱くなったのか?
昔に比べて、現代人の心は弱くなったと言われています。僕もそのように感じます。では弱くなってしまった原因は、何なのでしょうか?
失敗や挫折を想定している人と、そうでない人とでは、つまずいた時の狼狽え方、動揺が違います。こうした準備があるかないかで、心の強さが変わります。挫折を経験した人が強いのは、挫折をしても乗り越えられると知っているからです。
現代人の心の弱さとは、この失敗や挫折の準備の問題です。更に突っ込んでいけば、その弱さの正体は、『弱さを肯定されている』ことに他なりません。言い方を変えれば「甘え」です。
戦後の貧しい時代からの比較で、考えていきます。貧しい時代では生きるのに精一杯で、「一生懸命に頑張る」以外の選択肢はありませんでした。精神的に弱く挫けようものなら、生きていけません。状況の厳しさは、元より織り込み済みです。
ですから逆境で当たり前、失敗も挫折も当たり前、理不尽も当たり前です。予め覚悟が決まっていれば、狼狽えるにしても動揺するにしても、程度は軽くなります。
甘えの構造
現代社会は、弱さに寛容になっています。「無理をしないで、ありのままの自分で良いんだよ」、「みんな違って、みんな素晴らしいんだ!」といったフレーズを、皆さんもよく見かけるかと思います。SMAPが歌った『世界で一つだけの花』の大ヒットは、こうした時代を象徴しています。
以前は強くあることしか選択肢になかったものが、弱くても構わないという社会になっているわけです。それどころか、頑張っている姿を見て、「もっとゆっくり、マイペースで良いんだよ」といった助言さえも出てきます。
強くなくても良いし、頑張らなくても良い、みんな違ってみんな良い、これが、現代社会の甘さになっています。
頑張り過ぎる人へのアドバイス
上を目指して頑張る人は、それを達成する過程でストレスを抱えます。少なからず、壁にぶつかって挫折を経験します。競争に身を投じて、心も休まりません。
だからと言って、「頑張らなくて良い」というメッセージは短絡的すぎます。結局は得られるものを少なくし、社会でのポジションを下げ、より多くのストレスを抱える結果になります。弱くて頑張らない人が、どんな人生を送るのか? 冷静に考えれば、誰でも解ります。
頑張り過ぎている人に対するアドバイスは、「もっと頑張るために、休みなさい」です。強くあろうとして行き詰っている人に対するアドバイスは、「強くなくても良いんだよ……」ではなく、「自分の弱さも認められる人が、本当に強い人なんだよ」です。
弱くても良いという教育は、有り得ない
教育は、何も親や学校から直接、教えられるものとは限りません。社会の中にある、何となく共有されている精神文化も、人の言動の端々に登場して「そういうものだ」と教え込んできます。こちらの方が、刷り込まれやすく危険な部分があります。批判的に接する機会がなく、情報に対して無防備になっているからです。
人は強ければ強いほどに有利です。よほど時代や家庭環境に恵まれていない限り、頑張らずに一生を過ごせる人生はありません。
確かに、頑張り過ぎては心身に負担をかけます。鬱病など、精神的に追い込まれる人もいます。ですから、「頑張り過ぎてはいけない」というメッセージには、部分的な正しさがあります。
しかし若者を弱くしてしまった結果、ちょっとした事でリミットを超えてしまうのであれば、本末転倒です。例えば、就職活動くらいで頑張り過ぎたことになるなら、どのようにして生きていけば良いのでしょうか?
強さの推奨を、捨ててはいけない
弱さは自分を傷つけ、他人に迷惑をかけます。他人に強い態度で理不尽に接することも、弱さの裏返しです。
怪我の功名、風が吹けば桶屋が儲かる、といったケース以外に、弱くて良いことは一つもありません。結果としての弱さは許容されるべきですが、肯定するのは話が違います。単純に、体力と同じようなものと考えてみてください。体力は、高い方が良いに決まっています。体力の低さを推奨する人は、誰もいません。しかしだからと言って、存在価値がないようには否定されません。そういう人もいると、自然と受け入れられていますよね。
心の弱さは、好ましくはない。強い方が良いに決まっている。しかし結果として弱いからと、許されないものでもない。このようなバランスを取るべきところ、現代社会の風潮は、ただ弱さを肯定するカウンターを当ててしまっています。
強さばかりを求めてきた時代の歪を埋める反動として起こったので、それ単独では逆側に歪んでいます。合わせて丁度良くなるのですが、そこに社会全体で気付くには時間がかかります。
逆側に行き過ぎて、歪が目立った段階でようやく「あれ、これはこれで違うんじゃないか?」と言い始める人が増えてきます。ただ現代社会には、また少し違う多様性の波も合わさってきているため、気付くのが遅れています。
優しさと引き換えに、強さの推奨までも捨ててはいけません。
まとめ
弱さを許容するために、強さの推奨までも捨てるべきではありません。
単純な肯定と否定だけでバランスを取ろうとすると、必ず大切な何かが犠牲になります。
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