「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。「偏見を持たないために」という方向性での話は、よくあります。今回のテーマは、その善人の意識が、逆に仇となるケースを扱っています。
如何にも怪しい人、評判の悪い人を、「偏見を持ってはいけない」という意識で、あえて信じる。しかし怪しい雰囲気どおり、評判どおりの悪い人で、騙されてしまった。
といった出来事は、低確率のものに、あえて逆張りした当然の結果です。偏見は持ちたくない、しかし安易な逆張りは痛い目に遭うとなれば、どうすれば正解なのでしょうか?
偏見は、どのように作られるのか?
実態から離れたマイナス評価
偏見とは、何か? 実態とかけ離れた、マイナス評価や印象です。プラス側にかけ離れる分には、同じく偏ってはいますが、偏見とは言いません。辞書では「偏った見方、考え方」とあるので、厳密にはプラスの意味も含むのでしょうが、現実には見かけません。
ただ一部で、マイナスのものをマイナスに評価しただけで、偏見と言われるケースもあります。偏っている訳でもなく、単に悪く評価しただけで、偏見と位置付ける人もいるようです。
ここでは一般的な意味での、「実態からかけ離れた、マイナス評価や印象」を偏見と呼びます。
情報の偏り
それでは、偏見はどのように生み出されるのでしょうか。一つには、得た情報の偏りが挙げられます。
特定の人の悪口を多く聞かされたなら、その人に悪い印象を持って当たり前です。しかし誰かの主観を通した評価が、正確で妥当であるとは限りません。判断基準がおかしい、逆恨みがある、誤解されやすいタイプ、といった事情があれば、当然、評価は狂わされます。
国籍、人種、性別などの属性でも、話は同様です。悪い情報ばかりに触れていては、やはり悪い印象を持つに至ります。
実際には良い部分が多くあっても、それが認識されなければ、勘定に加えようがありません。多くの悪い情報に偏ったものを全体像、あるいは全体の縮図だと思い込んだ先に、偏見があります。
偏見の既成事実化ループ
偏見はやがて、その人の中で確定された事実になります。腑に落ちる感覚の強さ、長く覆らなかった認識などによって、偏見はより強固になります。それはもはや、疑いようのない事実です。すると今度は、その偏見がものを考える土台になります。
何かの誤解による偏見で、「Aさんは卑怯だ」と確定したなら、それを土台にして、他のものを捉えていきます。AさんがBさんに大変な仕事を任せたという事実があれば、「自分がやりたくない仕事を、Bさんに押し付けた」ように見えます。
次に今度は、「卑怯なAさんは、自分がやりたくない仕事を、他人に押し付ける」が確定します。すると普通に誰かに仕事を割り振っただけで、「また、自分がやりたくない仕事を押し付けている……」と思われます。
そんなAさんが、上司から好かれている訳はありません。上司と仲良くしていたり、褒められていたりする姿を見たなら、「これはおかしい」と疑問に思うのが自然です。辻褄を合わせるために、例えば「狡猾に上司に取り入っている」と解釈されます。
実際のAさんは、そもそも卑怯ではありません。自分が大変で嫌だからBさんに押し付けたわけではなく、経験を積みたいというBさんの希望に沿っただけ。普通に優秀なAさんは、当然のこととして上司からの評判も良い。
しかし偏見で捉えれば、実態とはまったく違ったものになります。偏見が既成事実化してループして行けば、実態とは似ても似つかない人物像を作り上げています。あなたも人生経験の中で、いくつか思い当たるケースがあるのではないでしょうか。
偏見から抜け出すのは、意外に簡単
偏見から抜け出すのは、その気さえあれば、意外に簡単です。誰か、何かをマイナスに評価した時に、その根拠となる要素を審議すれば良いのです。
上記のAさんの事例では、例えばBさんに確認を取ったなら、その時点で誤解はなくなります。確認のしようがない事柄であれば、真偽の判定を保留します。一人の人間が、偏見に満ちた思い込みを披露しただけかもしれません。
物事を判断するのに、確実に事実と評価できる要素だけを採用したなら、ほとんど偏見の入り込む余地はありません。少しゆるめて、確実ではないけれど信憑性の高い要素までを採用しても、偏見に陥るリスクを大幅に減らせます。
偏見に捕らわれない逆張り
他人を悪く思いたくない善人は、自身の偏見を怖れます。できるだけポジティブな解釈をして、悪評価を避けます。
ただそれは、やり方を間違えると、遠ざけるべき人間を遠ざけられない危険性を孕んでいるのです。
「良いように考える」縛り
自分が偏見に陥るのを極度に恐れる人間は、できるだけ悪評価を避けようとします。複数の解釈の余地があるなら、確率は薄そうでも良いものを取る。状況証拠が揃って悪評価が自然な場面でも、判断を保留して結論は出さない。
「良いように考える」という縛りを自分に課して、偏見に陥るリスクを遠ざけます。ただ考え方や行動に気を付けないと、騙されやすいお人好しになります。
無理に、プラスに評価しない
ここで知って、意識しておきたいのは、偏見から逃れる手は、プラス評価とは限らないという点です。
当たり前の話ですが、実態に即した正確なマイナス評価であれば、偏見とは言いません。プラス評価ではなくても、判断を保留しておけば、やはり偏見に陥ってはいません。
無理に強引な解釈でプラス評価をする必要性はないし、マイナス評価を過剰に怖れるのも違います。
決めつけず、マイナス評価の印象は印象のままで、未確定にして置いておきます。「今、自分はマイナス評価の印象だけれど、真実は違うかもしれない」と思っていれば、愚かな偏見の既成事実化ループに入らずとも済みます。
疑うこと自体に罪悪感があったとしても、仕方ありません。人はどんなに頑張っても、全ての情報を正確には把握できません。逸脱した人間、属性の傾向がある以上は、疑念は身を守るために必要です。
偏見で決めつけない、いつでも評価を更新できる姿勢をもっていれば、上出来です。
安易な逆張りは、正解率を下げるだけ
何でも良いように考えるという姿勢は、人間としては好感が持たれますが、人を判断する正解率を下げてしまいます。
結局その行為は、マイナスの偏見に陥らないために、真逆のプラスの偏見を被せているだけです。
他人や属性へのマイナス評価は、外れて偏見になる場合もあります。しかしどちらかと言えば、正確であるか、正解付近を取っている方が多い。安易な逆張りで、その正解の多くを捨てるのも考えものです。
あえて信じたばかりに酷い目に遭う、大損をする、というリスクのある場面では、未確定のマイナス評価に従って、リスクを回避する決定をしましょう。
例えば、手癖の悪い人かもしれないと思ったなら、席を立つ時にバッグを置いていかない。といったことです。
偏見から抜けきっておくのが重要
自分が偏見の範疇にいると、そこから脱出するために、カウンターを当てなければならない事情が生じます。マイナスに決めつけているから、逆のプラスをぶつけて、プラスマイナスゼロにします。
普段から、以下のような心がけをしておけば、カウンターの必要もなくなります。
・確定された事実と、印象との区別をつける
・確定された事実の中にも、勘違いはある
・マイナスの印象は、あって当たり前
信頼と偏見との間には、疑いがあります。偏見から抜け出すポイントは、正しく疑うことです。
まとめ
他人を悪く思いたくない、偏見を持ちたくないとする善人は、とにかく偏見から遠ざかろうとします。その手段として、プラスの偏見を被せて自分に言い聞かせる行為は、場合によっては危険です。
人生経験を積んで、ある程度以上の常識があるなら、他人への悪評価も、そう見当外れにはなり得ません。間違えてしまう場合もありますが、合っている方が多い。
無理にカウンターを当てて中和せず、偏見の決めつけでもなく、正しく疑うことを覚えましょう。
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