「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。人は衝撃を受けると、思考力を失います。時としてそれは、論理的には有り得ない結論を導き出します。
地頭の良い人は、強烈な体験や印象はあっても、冷静に距離を取ろうとします。
地頭を良くする重要なポイント7、「強烈な体験や印象は、認知を歪ませると知る」
冷え取り健康法に魅入られた人
まず誤解のないように強調しておきますが、冷え取り健康法は素晴らしいものです。僕も治療家として活動を始めた頃には、強烈に推奨していました。今では以前ほどには言っていませんが、それは認知度が上がってきたためです。ただ冷えに起因する健康不良には効果を発揮しますが、そこに因果関係が薄い場合には、あまり意味を成しません。普通に考えれば、当たり前の話です。
ある治療家の方が、冷え取り健康法を中心に活動をしていました。「治療家として手技は行うけれど、それはあくまでも冷え取り健康法を普及するための方便」と断言される程です。仮にKさんとします。
Kさんは、冷え取り健康法によって、自身の健康が大きく改善する経験を持っていました。これは凄い! と心酔し、冷え取り健康法に傾倒していきました。治療院の患者さんでも、次々と目覚ましい結果が現れました。それが高じて、冷え取り健康法は万病が治ると過信し、虫歯さえも治すと信じていました。
しかし冷え取り健康法で血行が良くなろうとも、自律神経が整おうと、虫歯が治る気配は一向に訪れません。なぜならそこに、虫歯を治すに至る因果関係がないからです。ついにKさんは諦め、歯医者で治療を受けるに至りました。
その時、Kさんの治療院は、冷え取り健康法が虫歯に敗北してしまったと、お通夜のような状態だったそうです。
強烈な経験によって、論理的思考が放棄され、信仰になってしまったのです。
非武装中立で平和になると信じた、戦争経験者
僕が小学生の頃、およそ35年前は、まだ多くの戦争経験者が存命でした。二度と戦争という過ちを犯してはならないと、反戦平和の思想教育も盛んに行われていました。
今ではあまり見かけなくなりましたが、当時は戦争経験者による非武装中立論を多く聞かされた印象があります。軍隊を持たなければ、戦争を起こせない。日本のような危険な国は、もう軍隊を持つべきではない。といった論調です。
実際に戦場に赴いた人の話は重く、誰も異論を唱えません。内心では反対していても、とてもそれを口に出せる空気ではありません。悲惨な状況を潜り抜けてきた人の言葉は、戦争を知らない人たちにとって、それほどに重厚だったのです。
おかしいとは思いながらも、僕もその空気に従っていました。小学生の当時にそこまでの認識はありませんでしたが、国益を求めて戦争を繰り返してきた歴史を学んだだけでも、非武装が平和につながるとは認められませんでした。
暴力は、全ての道理をねじ伏せる最強の力です。暴力に対抗できるのは、最終的には暴力だけです。仮に世界中が一斉に武装を放棄して非武装になっても、ある一国、いえ、ある一勢力が野望を持って武力を持てば、その秩序は簡単に崩壊します。非武装で平和な世界は、「武力を持てば世界の富と利権を牛耳れる」という野望を育てる温床でもあります。
ここで僕は、今回のテーマの教訓を得ました。強烈な体験をした人の話には、警戒をしなければならない。その部分で論理的な思考力が負けてしまい、かえって道を誤るケースがある。しかも周囲を逆らわせずに圧倒して、誤りが拡散される恐れすらある。
ですから僕はそう気付いて以来、強烈な体験に裏打ちされた人の話には、警戒する癖がついています。ただそこにある経験上の事実には、極めて高い価値があります。
宮崎勤事件の後に起こった、アニメおたくへのバッシング
宮崎勤が起こした事件は、あまりに衝撃的でした。そのおぞましさに、日本中が恐怖をし、冷静さを失いました。
なぜ宮崎勤のような人物が生み出されたのか? 世間はその答えを求めました。意味不明なモンスターであるより、対処可能な存在であって欲しいと願ったからです。
そこで目をつけられたのは、彼のアニメおたくという属性でした。当時のアニメは、純粋に子供をターゲットにしています。おたくと呼ばれる大人のファンが増えて、そこを標的に作品を作り始めたのは、少し後の時代です。現在と比較して、アニメおたくは珍しい存在でした。
世間は、「アニメおたくだから、危ないヤツなんだ」という認識に飛びつきました。アニメおたくは宮崎勤予備軍、今では馬鹿らしいと思われるでしょうが、当時はこの認識が常識にさえなっていました。
彼の起こした事件の衝撃が、世間全体の認知を歪ませたのです。
地頭の良い人の考え方
強烈な体験や印象は、思考回路を部分的に停止させます。結果として、論理的に有り得ない逸脱した結論を導き出します。実際に見た、経験した、という事実は、それを適切に扱えるなら、強烈なアドバンテージになります。しかし冷静さを欠くようなら、逆に認知にズレ、歪みを生じさせます。
地頭の良い人は、そのインパクトに圧倒されて、思考停止に陥りません。他人であれば、経験した事実のみを受け取り、結論を鵜呑みにしません。もしも根拠が示されずに結論だけが述べられたなら、根拠を確かめようとします。
自分が強烈な経験をしたなら、認知に悪影響を及ぼさないように警戒します。感情的に心が引っ張られても、それを追認しません。自分自身の感情や心象とも、冷静に距離を取ろうとします。
まとめ
インパクトの強さに圧倒されると、人は思考力を失います。論理的に有り得ない結論が導き出され、時にそれは他者に伝染します。
地頭の良い人は、衝撃的だからといって、情報をえこひいきしません。衝撃を受けたなら、衝撃を受けて冷静さを欠いたと自覚して、認知と心とを分けて把握しようと努めます。
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