「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。サンクコストの呪縛は、人生全体に広く根を張っています。人はサンクコストバイアスによって、非合理な選択と決断に誘導されます。簡単に言えば、勿体ないという思いで、かえって損をしています。
今回の記事は、サンクコストの呪縛、そのバイアスから解放される方法についてお伝えしています。人生全体に、多大な影響を及ぼす内容です。
サンクコストとは?
サンクコストとは、Sunk(埋没)、cost(費用)で、埋没した費用を意味します。まだ回収できていない、結果の出ていない費用です。
例えば、Youtuberになって稼ごうとして、パソコン、カメラ、動画編集ソフトなどを購入します。そして動画企画に必要なコストをかけて、広告収入が0円であるなら、それら全てがサンクコストになります。また金銭だけでなく、コストには時間や労力なども含まれます。
サンクコストが大きくなると、人は引くに引けない心情になります。それまで掛けてきた費用が無駄になる抵抗感から、合理的な判断を狂わされます。
日常にある、サンクコストの呪縛とバイアス
テレビや定額の動画ネット配信で、つまらない映画に当たったとします。30分ほどで、もうここから面白くなりそうな期待も持てません。こうした状況では、殆どの人が観るのを止めます。
しかしお金を払って入った映画館だったら、話は別です。1800円もかかっているし、わざわざ時間をかけて足を運んでいます。このような状況では、多くの人が、勿体ないからと最後まで見続けます。
この勿体ないという感覚が、サンクコストの呪縛です。そのバイアスによって、非合理な選択と決断に誘導されます。他にも、いくつか例を挙げていきます。
パチスロの巧妙な罠
サンクコストの呪縛をもっとも巧みに仕掛けてきているのは、パチスロ業界でしょう。永遠に外れ続ける台は、基本的にはありません。打ち続けていれば、いつかは大当たりします。
外す時間が長ければ長いほど、投入金額が大きければ大きいほど、当たりの確率が上がっているように思えてきます。数万円を既に投じた状態では、「今、正に大当たりの機運が高まっているこの段階で、止めるわけにはいかない」という心境にさせられます。
業界は、この心理をさらに巧妙に利用します。一定以上の投入金額になると、救済措置として当たりを出易くします。これを「天井」と言います。このように現実として、投入金額が大きいほど、当たりの確率が上がるといった現象を起こします。
すると天井機能に助けられたプレーヤーは、その味を覚えます。大量に金額を投入してくれる人が増え、最終的には、業者がより大きく儲けられるようになっています。ただでさえ強いサンクコストの心理を絡め取り、呪縛をより強くしているという訳です。
ちなみに他の客が天井付近で止めた台を狙う人たちを、業界用語でハイエナと呼びます。
有効期限つきのポイントシステム
1000円以上のお買い物をすると、ポイントカードに、1000円につき1個のスタンプを押してもらえる。スタンプが溜まると、商品と交感できる。但し、有効期限はカード発行日より1年間。といった、システムです。
希望をしなくても、初回の買い物に同時に付いてくるケースもあるので、普通に生活していれば誰もが目にするものでしょう。
ポイントカードを発行する側からすれば、顧客を囲い込めるという利点があります。「どうせ買うなら、ポイントが溜まる所にしよう」、「ポイントが溜まったカードの有効期限が切れるから、何か買って商品と交換してもらおう」と思ったなら、サンクコストの呪縛にあっています。
既に欲しい商品は購入しており、特典はその上でのおまけですが、失うとなれば惜しいのが人情です。
資格や技能と転職
業界自体が下火になる、会社での待遇や人間関係が悪化した、他に興味のある仕事が見つかった、などの事情で転職を考えたとします。
しかしそこに費やしたコストがあると、サンクコストが抵抗になって、決断を鈍らせます。せっかく苦労して取得した資格が無駄になる。培ってきた技術を使えなくなる。育ててきた顧客との人間関係が惜しい。などという思いが、足枷になります。
結果として決断は保留されて、不満を抱えながら、あるいはチャンスを横目に見ながら現状維持になります。倒産、解雇など、よほどの出来事がない限り、現状で得られている物とサンクコストへの思いが勝り、踏み切れない人たちも少なくありません。
重大決心のサンクコスト
友達や家族との旅行の計画で、行き先で意見が分かれたとします。自分はハワイに行きたかったのですが、他の人は京都に行きたいと対立、結果として自分が折れて京都に決まりました。
そこでハワイに行きたい気持ちを諦めて、京都旅行の良さを探します。観光地や食べ物などを調べていく内に、京都旅行にも魅力を感じられるようになり、ハワイに行けない不満も小さくなってきました。
しかしそこで、相手が態度を変えます。ハワイに行きたいAさんの気持ちを汲んで、今回はやっぱりハワイにしようと言ってきたのです。嬉しい反面、自分としては複雑な思いです。せっかく京都旅行を楽しみに思えるように時間と労力をかけたのに、それが無駄になるからです。
将来設計で親と対立して、親が望む道に妥協する。懸命に自分の夢を諦め、親が望む道の良さも見つけたところで、親が態度を変える。喜ぶ反面、あの決心にかけた苦労は何だったんだと、そちらの道を捨てるのも惜しく感じる。
重大決心のサンクコストとは、例えばこのようなものです。自分にとって不利なものを受け入れるための決断も、その苦労が大きくなればなる程、サンクコストの呪縛が生み出されます。
サンクコストの呪縛から解放されるには?
消費活動、ギャンブル、人生設計に至るまで、サンクコストの呪縛は人生全体に根を張り、自由な身動きを阻害しています。
それではサンクコストの呪縛から解放されるには、どうすれば良いのでしょうか?
機会損失と天秤にかける
お金、労力、時間は限られたリソースです。より良い人生を歩んでいくためには、これらをより良く配分して行かなければなりません。
サンクコストの呪縛が問題になるのは、総合的には損をするからです。今まで歩いてきたAの道はAの道で、ある程度の利益はある。しかしBの道に移った方が、それ以上の利益がある。となった時、Bを選択した方が明らかに得をします。
サンクコストだけを考えれば、Aに居続けた方が損をせずに済みます。しかし選択しなかったBの機会損失の方が大きく、Aの選択は合理的ではありません。
こういった場合、サンクコストと機会損失とを天秤にかけると、より得をする方を選択できます。
未来への期待値だけで判断する
これは「機会損失と天秤にかける」と同じで、ただ視点を変えたものです。
Aの選択は、期待値20。Bの選択は、期待値100。であったなら、誰でもBを選びます。
サンクコストと機会損失を天秤にかけても同じ結果になりますが、こちらは最初から、サンクコストを判断材料に含ませないのです。
精神的な抵抗感の少ない方、しっくりする方を採用してください。もしくは両方を合わせて、合理的な判断を強化しても良いです。
ギャンブルの損は、遊びの費用
パチスロの例をご紹介しましたが、サンクコストの呪縛は、競馬、競輪、競艇、カジノなど他のギャンブルでも発生します。この場合には、株式投資、FX、宝くじなども含めて、ギャンブルとします。
ギャンブルでの損失にサンクコストを感じてしまうと、最終的には勝つか、破綻するまで降りられません。資金が完全に溶けて破綻した後に、借金までして勝負を継続する人も多くいます。
そもそもギャンブルは、負けるように出来ています。だから胴元、主催者が安定して儲けられます。その時々で勝ち負けはあっても、長期的に見れば負けます。ここでトータルで儲けようと考えることが、最初から間違いです。
ただギャンブルは、好きな人には楽しいです。だからそれを遊びと捉えて、負けた分は遊びに使ったお金として、感情的に処理しましょう。お金を使った分、ちゃんと楽しめた。だから元は取ったと思えていれば、サンクコストとは見なされません。
しかし投資であれば、それを収入源にしたい人は多くいます。競馬やパチスロだって、それで生計を立てている人はいます。期待値に基づいてトータルで稼げる知識や腕前になれたなら、話は違ってきます。
幅広く役立つものにコストをかける
これまではサンクコストの発生を前提にして、それに縛られない考え方をお伝えしました。対して「幅広く役立つものにコストをかける」は、サンクコストを発生させない考え方です。
例えば外国語、中でも英語であれば、活かせる幅が広いです。健康のために行う運動も、絶対に無駄になりません。外見を良く整えるのも、他人からの好印象という結果になるなら、絶対に得になります。あなたが今、ご覧になっている「心クリック」の記事郡も、人生のあらゆる局面で役立ちます。
このような幅広く役立つものは、サンクコストになりません。こちらで多くのコストをかけて利益を得ているなら、サンクコストの放棄も、心情的に容易になります。
ささいな損失は気にしない
サンクコストのあらゆる呪縛から解放されるべきかと言えば、僕はそうは思いません。
つまらない映画を最後まで観てしまった、ポイントカードの失効を避けようと余計な物まで買ってしまった、などという損失は、微々たるものです。
完全なる合理性の超人になって、ありとあらゆる非合理を潰すという生き方も、それはそれで総合的に見れば非合理です。なぜなら思考、精神力、労力、時間などは限られたリソースであり、ありとあらゆるものを完全な形では遂行できません。細かいところにエネルギーを投入した結果、重要なものが疎かになっては本末転倒です。
第一、 細かいところに気を配ったところで、得られる利益の方も微々たるものです。そういったところでは力を抜いて、あえてサンクコストの呪縛の中に居続けても良いのです。
サンクコストに呪縛された行動にも、それが無駄にならなかった喜びや満足があります。合理性から外れた人間らしさにも、ちょっとした人生の彩りがあるのです。
まとめ
お金、労力、時間などのコストが無駄になるのは嫌だ。サンクコストの呪縛は、人として当然の心理です。しかしそれで総合的に損をするなら、サンクコストの呪縛から解放されなければなりません。
機会損失と天秤にかける、未来の期待値だけで判断するなど、サンクコストに縛られない考え方で、本当に自分にとって良い決断をしましょう。
-
-
自己評価は、自分の言動に対する評価で決まり、その評価が言動をパターン化させる。
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。どのような自己評価で生きているかによって、気分は大きく違ってきます。 善良である、悪辣である、優しい、冷たい、品が高い、下品、前向きに頑張れる、後ろ ...
-
-
人はなぜ自殺を選ぶのか? どうすれば自殺を防げるのか?
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。人は何故、自殺を選ぶのでしょうか? 自殺するまで追い込まれない為には、どうすれば良いのでしょうか? 個々で様々な事情はありますが、共通するのは精神ト ...
-
-
『ノストラダムスの大予言』にある人類滅亡は、なぜ信じられ、エンタメ化したのか?
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。今回は、子供の頃にあった『ノストラダムスの大予言』について、お話しします。 子供の頃、ノストラダムスは日常の一部でした。多くの人が1999年に人類は ...
-
-
怒りという感情を、精神異常と認識しておくべき理由とは?
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。今回は、怒りの危険性についてお伝えします。 怒りは、爆発的なエネルギーで危険から逃れるため、精神を屈服させないために、絶対に必要な感情です。しかしそ ...
-
-
感謝をしたくない、ありがとうと言いたくない、という病
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。今回は、近頃で目立っている「感謝を否定する」意見について、その根本的な誤りを指摘します。 確かに、感謝は強要されるものではありません。しかし感謝の拒 ...
-
-
更新情報:「頑張るよりも、楽しむ方が優秀に。潜在能力は、楽しんで発揮する。」に雑談動画を追加しました。
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。 過去記事を更新しても、「新着記事」にはなりませんので、こうしてお伝えしていきます。 更新情報 『頑張るよりも、楽しむ方が優秀に。潜在 ...
-
-
更新情報:「失敗して痛い目に遭った時、思考停止して逃げれば、心の負債になる。」に雑談動画を追加しました。
「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。 過去記事を更新しても、「新着記事」にはなりませんので、こうしてお伝えしていきます。 更新情報 『失敗して痛い目に遭った時、思考停止し ...
♦更新情報を、メールでお届けします。