「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。怒りとは、攻撃性、破壊の衝動です。大元には、生き物として、生存を守るという目的があります。しかし高度に知性と感情が発達した人類においては、生存とは縁遠い切っ掛けをもって、怒りが発動します。
怒りの前には、悲しみや怖れがあります。悲しみや怖れの前には、苦痛があります。今回の記事のテーマは、「怒りを深く理解する」です。
怒りのコントロール、傷心を回復させる、などに役立つ、基本となる知識です。
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怒りの役割と本質
犬や猫が怒っている様子
人が怒る理由は、多種多様です。知能が高度に発達した結果、自尊心、倫理・道徳感、正義感、美学なども、その根拠になり得ます。こうした分岐した事例を細かく拾っていくと、かえって本質が見えなくなります。
ですから一旦、人よりは知能で劣るものの、怒りという感情を持つ身近な生き物を例にして考えてみます。
飼った経験はなくても、犬や猫が怒っている様子は、想像できると思います。例えば今、うちにいる犬は、
・痛い
・攻撃される
・攻撃されている人を守る
・自分の物を取られそうになる
といった時に、怒って牙を剥いて吠えます。場合によっては、噛みつきもします。これら4つの条件を要約すると、
・痛い → 自分の身を守る
・攻撃される → 自分の身を守る
・攻撃されている人を守る → 大切な存在を守る
・自分の物を取られそうになる → 奪われない
となります。こうして見ると、怒りは、自分や仲間の生存に直結していると伺い知れます。他の犬や猫であっても、同様でしょう。そこには、自尊心、倫理・道徳観、正義感、美学といった概念は存在しません。
あらゆる苦痛は、生命の危機
予期せぬ突発的な激痛に、瞬時に怒るのは当たり前です。意図的だろうと、事故だろうと、激痛に反応して、「痛ってーな!」と怒鳴る。……ような経験は、普通に誰にでもあると思います。
これが生き物としてある、犬や猫とも共有されている、原始的な怒りの発動です。全ての怒りの基礎が、ここにあります。
知能が高度になる程、苦痛の幅は広がります。他人から横柄な態度を取られた、醜悪な犯罪を報道で知った、SNSで他人のキラキラ投稿を見た、恋人や配偶者が浮気をした、自分の子の成績が落ちた、といった多種多様な切っ掛けで、怒るに至ります。
こうした怒りは、一見、「痛ってーな!」とは、まったく別物に思えます。しかし心の中を奥深く進んでいくと、実は根っこの部分は同じだと解ります。
あらゆる精神的な苦痛は、肉体的な苦痛と大元では等しく、そこには生命の危機があります。どんなに高度で複雑な概念によって生み出された苦痛であっても、心の底では、生命の危機と感じているのです。
怒りは、屈服の拒絶
生存の脅威に心を折られ、屈服させられれば、待つのは死だけです。それを回避するには、迅速に爆発的な力で抵抗すべきです。怒りは、屈服の拒絶なのです。
ですから怒りの前段階には、屈服があります。屈服の領域に足を踏み入れた瞬間に、精神力で怒りを生み出し、強引にその攻撃性を持って脱出します。
あるいは屈服の領域に沈みながら長い時間を過ごし、精神力の回復をもって、怒りを発動させるパターンもあります。何れも、屈服の拒絶という本質は同じです。
屈服の領域には、深度とバリエーションがあります。「不安 → 恐怖 → 悲嘆 → 無気力・感動」のルートと、「悲しみ → 悲嘆 → 無気力・感動」のルートです。
不安と恐怖は、未確定の脅威に対して抱く感情です。それが現実になって、絶望、感受性が停止するに至ります。悲しみは、深くなれば嘆きを帯び、辛さが過ぎれば、同様に感受性を停止させます。
怒りは、こうした屈服の領域から、強引に脱出を図っている訳です。また深くなればなる程、より多くの精神力を必要とします。ですから多くの場合、怒りの前には、悲しみ、恐怖があります。悲嘆以下に落とされれば、怒りで脱出するのは困難です。
悲しみ、恐怖の前には、苦痛がある
心は、苦痛によって屈服させられます。ですから怒りの前には、悲しみや恐怖があり、悲しみや恐怖の前には、苦痛があります。
人間は知能が高く、自尊心、倫理・道徳観、幸福観といった多くの概念を持っています。概念の定義に沿って、心は満たされ、傷つけられます。他の動物では気付きもしない事柄で傷つき、苦痛が生み出されます。
時として、客観的に見れば、後から考えれば些細な事柄であっても、苦痛は巨大なものになり得ます。それは苦痛の根幹に生命の危機があり、場合によっては死やそれに近いものと心が受け取ってしまうからです。
苦痛の勢力に対して、精神的な抵抗や工夫があり、その結果としての姿の一つに、怒りがあります。
まとめ
怒りは、精神力を持って、心の屈服を拒否する手段である。怒りの前段階には、悲しみや恐怖がある。
あらゆる精神的な苦痛の大元には、生命の危機がある。人間は知能が高く、様々な概念を持ち、その概念に沿った苦痛が生み出される。心はそれを生命の危機と感じるため、客観的には些細なものであっても、時として巨大な苦痛になる。
今回の記事は、ただ「怒り」について解説したのみです。怒りとの付き合い方、コントロールなどは、どうぞ他の記事もご参照ください。この記事をご覧になった後ですと、より深く有意義な学びになると思います。
カテゴリー:怒り
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