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スポーツでのゾーン体験、その感覚を潜在意識から解き明かす!

投稿日:2019年5月18日 更新日:

 僕は複数回、ゾーンに入った経験があります。基本的には運動神経が鈍いのですが、ゾーン中はまさに別人! とんでもないパフォーマンスを発揮します。

 そもそもゾーンとは何なのか? 今回は個人的な体験を詳細にレポートすると共に、ゾーンの秘密に迫ります。

 

ゾーン経験

未経験のサーブを、打ち方も知らずに打てる

 僕のテニスレベルが、まだ初級の中くらいの頃です。サーブがあまり得意ではなく、フワッとしたボールでただ入れるだけのものが主流でした。

 試合相手は、僕のサーブを完全になめています。思いっきりサイドの端に構え、バックサイドにスペースがありません。どうせサーブが遅いので、センターぎりぎりに入っても、余裕で取って叩ける! という算段です。

 この時、僕はほどほどに疲れていました。頭もボーっとしています。それでいて、闘争心は自覚できました。センターが大きく空いているのを見て、僕はボーっと考えます。

(センターに速いのを入れたら、サービスエースが取れるな。どうせならバウンド後に、相手から逃げるようにスライスをかけて曲げれば、もっと確率が上がるな……)

 スッと自然にトスが上がり、ボールをヒット。低弾道の剛速球がセンターの深い角に入り(ピンポイントで狙った場所)、バウンド後、鋭く相手から逃げるようにスライスしました。相手はラケットの先で触れるのが精いっぱいで、ボールはネットにかかります。狙い通りのボールで、サービスエースになりました! 僕は心の中で、よし! とガッツポーズをしました。……と次の瞬間、我に戻ります。

(あれ、今のどうやって打った??)

 高速スライスサーブなんて、僕は打った経験がありません。練習で打とうとした事もないし、それ以前に、打ち方の知識もありません。僕はたった今、狙って打ったサーブを、打ち方からして知らなかったのです。でも、打ててしまった! これは潜在意識の一端です。

潜在意識は、高速スライスサーブの打ち方を知っている

 打ち方を知らないとは言っても、本当には知っています。テレビでトッププロのプレーを見ているし、上級者のプレーを生で見ています。表面上の意識では把握していなくても、潜在意識は、高速スライスサーブの打ち方、センターへのコントロールの仕方まで、全て知っていたのです。疲れてボーっとして思考が引っ込んだ時、潜在意識が活性化。上級者のようなプレーを完成させたのでした。

 それ以降、僕はその高速スライスサーブを…… 狙って打てるようにはなりません。だって表面上の意識では、打ち方すら、よく解らないのですから。

 潜在意識とは何か? それを理解する上で、助けになるエピソードだと思います。

 

 

 

 

ゾーンとは何か?

 これは、スポーツ界で言われるゾーン現象です。多くのスポーツ選手が、ゾーン体験を証言しています。絶好調の野球選手が「ボールが止まって見えた」と発言したのは有名ですが、これは正に、ゾーン体験だと思われます。ゾーンに入ると、普段では出来ないような高度なパフォーマンスを発揮できます。その特徴は、以下の通りです。

・集中とリラックスとが共存した感覚
・強い幸福感とワクワク感
・自然と、理想的な動きが出来る
・時間の流れがスローになる

 僕もテニスをプレーする中で、ゾーンを何度か経験しています。運動神経の鈍い僕は、どう頑張っても、初中級レベルまでしか上手くなりませんでした。初級から初中級への壁は薄いのですが、そこから中級への壁は厚かったです。ところがゾーン中は、まるで自分が上級者になったかのような動きをします。その一例が、今、ご紹介した高速スライスサーブです。

ゾーン中、時間はゆっくりと流れる

 もう一つだけ、体験したゾーンの世界をご紹介させてください。相手は中上級者で、高速フラットサービスの打ち手でした。僕はリターンで、その高速サーブを待ち構えます。普段の僕なら、まともにリターンできる代物ではありません。ラケットに当てて、相手コートに返っていけば大成功です。あまりに速すぎて、スイングする時間的な余裕がないんです。ところがその時は、どんな速いボールが来ても返せる感覚がありました。僕は「今、ゾーンに入っているな……」と気付きました。集中とリラックス、強い幸福感とワクワク感、それは過去に経験しているゾーン特有のものだったからです。

 放たれた高速サーブが、身体の正面に入って来ました。フォア側で取ると選択し、スイングするスペースを作るために、身体を左側に逸らして逃がします。膝よりもやや低いところで、ボールを捕まえました。ボールが速い分、打点が食い込まれています。重い球質で威力を感じます。ボールの威力が強いので、ストリング(ラケット面にある糸)が凹んでいます。僕は打ち返すのを我慢して、ストリングが反発するタイミングを待ちます。もしも反発前にフォロースルーに入ってしまうと、死んだボールにしかなりません。ストリングの反発力とフォロースルーの力を合わせることで、ボールに勢いが生まれるのです。

 ストリングが反発を開始する感触が伝わってきます。打点を後ろに取らされているので、腕力では、もはや打ち返せません。即座に、反った身体を戻す力を利用すれば良いという結論に至ります。腕は押し込まれないように固定しながら、捕まえたボールを背筋で投げ返すイメージです。ボールを身体の前まで押すと、腕の力も使える体勢になります。ここで前腕を内側に回して順回転のスピンをかけます。ボールが離れる最後の最後で、手首の力を加えて勢いと回転を増します。あとは振り切るだけです。リターンしたボールは、イメージ通りの速さと弾道になりました。サーバーはそのボールをネットにかけ、僕はポイントを取れました。

 これがゾーンに入った一瞬の出来事です。サーブが打たれて、打ち返すまではゼロコンマ数秒の世界です。その中で、ここまでやっているのです。情報の把握 → 選択と決断 → 実行 → 情報の把握 → 選択と決断 → 実行 → 情報の把握 → ……を何度も繰り返しています。このプロセスは、全て自覚されています。

 この処理スピードの速さは、顕在意識では不可能なレベルです。けれども潜在意識の中では、おそらく日常なのです。

 またこの打ち方も、初めての試みでした。イメージトレーニングの経験すらありません。しかしどこかで、僕はこの打ち方を見て知っていたのでしょう。潜在意識は、一度でも見ていれば、それを把握してデータベースに格納しています。咄嗟に、状況に合わせた最適な選択をしてくるのです。あるいは、身体の動かし方の知識だけから、合理的に導き出した結論かもしれません。

狙っては、ゾーンに入れない

 ゾーンに入ってさえいれば、僕は運動神経抜群の上級者です。ですから何とか、あのキレキレのゾーンに入りたいと工夫をしました。

・疲労で頭がぼーっとしている
・闘争心が高い

 この条件でゾーンに入っているわけですが、闘争心をむき出しにして疲れたからといって、ゾーンに入れるわけではありません。狙ってゾーンに入れた経験は、ついに一度もありませんでした。

 

 

 

まとめ

 頭がぼやけて潜在意識が優位になり、闘争心が強い時、ごく稀にゾーンは登場します。

 その感覚をさらに詳しく知ってみたい方は、テニス漫画の「ベイビーステップ」をお勧めします。経験者の目から、かなり忠実に感覚が描写されています。「黒子のバスケ」でもゾーンは出てきますが、あれはちょっと違います。

 

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