「軽やかに♪ 心click」管理人、小池義孝です。以前にもお伝えしたフェミニズム問題ですが、近頃(2019年 11月現在)、かなり興味深いアイデアが話題になっています。
ドラゴンボールやワンピースなどでお馴染みの、あの週刊少年ジャンプに、正しいフェミニズム教育を目的とした漫画を掲載したらどうか? と言うのです。
フェミニズムと少年ジャンプ……、かなりイメージにギャップがありますが、果たしてこのアイデアは成立し得るのでしょうか?
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少年ジャンプで、フェミニズム教育の漫画は成立するのか?
少年誌のお色気描写は、フェミニズムの敵
なぜ少年ジャンプに目をつけたのかと言うと、そこには経緯があります。少年ジャンプに限らず、男の子向けの漫画雑誌には、ちょっとしたお色気シーンが付き物です。小学生低学年をターゲットにしたコロコロコミックにまで、女性が見ればビックリするような描写があります。
フェミニスト視点では、このようなお色気シーンは男性に悪影響を及ぼすと考えます。子供、少年の頃から、女性を性対象として消費することを覚え、その人格を尊重しなくなるという訳です。
漫画の世界も、現実の社会風潮の影響を受けます。以前は、痴漢行為や覗き、下着を盗むなど、男が欲求に任せて積極的に動いていました。被害を受けた女性は怒るものの、ただ怒ってお終い。それで精神的に傷つきはせず、微笑ましいコミュニケーションとして描かれていました。
さすがに現在ではそれは通用しませんが、性的に誇張されたキャラクターデザインや服装、性的に誇張されたアングル、ぶつかって倒れ込んで胸に触ってしまうなどのアクシデント、恋愛絡みでは、盛んにお色気シーンが登場します。
性的に消費されるのを嫌い、男性に意識改革を願う人達にとっては、まだまだ不満の残る内容なのでしょう。少年漫画誌のお色気描写は、フェミニズムにとって敵と位置付けられています。(勿論、一枚岩ではなく、個人個人で意見は異なります)
少年ジャンプは、その時代での浮き沈みはあるものの、少年漫画界ではもっとも知られた名門です。選ばれたのは、もっとも影響力があると見込まれたからです。
フェミニズム漫画とは、どのようなものか?
内容については、現時点では具体的なアイデアは見られません。ただ男性の意識を変えるのを目的にしている以上は、教育色の強い内容になるはずです。
フェミニストの主人公が世直しをしていく方向性、あるいは男尊女卑やセクハラをする男性主人公がヒロインであるフェミニストによって正され、成長していく方向性でしょうか。
工夫を凝らすなら、フェミニズム法が施行された架空の社会をシミュレートする作品。フェミニストが理想とするパラレルワールドに迷い込む作品。性欲が男女で逆転をして、男性が女性からセクハラを受ける作品。……なども考えられます。
フェミニズム法は、バトルロワイヤルのイメージ。パラレルワールド、男女の逆転は、星新一作品か、世にも奇妙な物語のイメージです。
フェミニズム漫画は、ヒットして成功するのか?
当たり前ですが、これはやってみなければ判りません。しかしほぼ確実に言えるのは、真面目な人が教育色を強く打ち出してしまえば、エンターテイメントとして成立せずに失敗します。
ここで知っておくべきは、題材の調理の仕方です。少年ジャンプの王道と言えば、努力、友情、勝利、です。強大な敵に対して、努力してレベルアップして、友情パワーで勝利する。これを魅力的な世界観やキャラで上手に描けば、それだけで面白くなります。ずばり、ワンピースやナルトがそうです。
なぜならこの3つは、読者の大好物だからです。素材そのものが美味しいので、そのまま出しても通用します。お色気シーンも、まあそうですね。社会問題にもなった「ゆらぎ荘の幽奈さん」は、ストーリーはあってないようなものです。
ところが、フェミニズムは違います。これを素材のまま提供しても、少年誌の読者はほとんど興味を示しません。出すなら、他のウケる要素と組み合わせて、融合させる必要があります。
お笑いにして茶化すわけにもいかないし、フェミニストのヒロインに人気が出るとは考えにくいし、調理としては難しそうです。
商業誌は、利益が最優先
少年ジャンプに連載されて生き残るのは、至難の業です。人気が上がらなければ、容赦なく打ち切られます。そもそも見込みがないと判断されれば、チャンスすらもらえません。商業誌は、利益が優先です。
読者は、少年ジャンプで勉強しようとは思っていません。鬱陶しい説教も、お断りです。そういった煩わしさから解放されるのが、少年漫画の世界です。もしも少しでも教育色、説教臭さを感じ取られたなら、すぐに読み飛ばされるようになります。彼らには、掲載作品の全てを読む義務などないのですから。
作品の面白さ以外の目的は、全て余計なノイズです。アイデアの100%を、面白くするために注ぎ込むようでなければ、通用しません。教育しようとする意識から離れて、フェミニズムをどう使えば面白くなるのか? に全振りして考えるべきでしょう。
SF、ファンタジー、格闘、スポーツ、お色気+恋愛、などの鉄板ジャンルがあります。これらと組み合わせて、フェミニズムは世界観の目新しさ、魅力的なキャラ設定として活かす方向性で考えるなら、可能性を見い出せるのではないかと思います。お色気+恋愛は、あまりに相性が悪くて成立しないように思えます。しかしこれも、見せ方、工夫次第です。
この点については、アニメにはなりますが、エヴァンゲリオンが参考になります。哲学を題材として大きく扱っていますが、哲学を教えようとはしていません。それはあくまでも、面白くするための素材です。
教育色が強くても通用するジャンル
これまでお話してきたのは、少年ジャンプなど、少年誌という分野においてです。ジャンルによっては、教育色が強くても通用します。
例えば、「漫画で学ぶフェミニズム」といったコンセプトであれば、ジャンプでヒットさせるようなハードルの高さはありません。読者は勉強するために読むので、面白さはあまり求めていません。文章だけで読むよりも、負荷が大幅に減っていれば良いのです。
少年ジャンプでヒットさせるのとは方向性がかなり違いますが、これはこれで意味のある取り組みです。自分から学ぶ気はあるけれど、労力や時間などの都合で敬遠していた層にアプローチできるのですから。
まとめ
少年ジャンプでフェミニズムを教えようとするのは、普通に考えれば無理です。教育色、説教臭さが出れば、すぐに読み飛しの対象になります。
もしも企画を考えるなら、フェミニズムによって、どう話が面白くなるのか? だけを考えましょう。ウケる要素と融合したなら、可能性も見い出せると思われます。
念のために言っておきますが、フェミニズム戦士が、男尊女卑、セクハラ野郎をバッタバッタと退治するようなものは、それで留飲を下げるフェミニストにしかウケませんよ。
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